コの後の世界 −− 信じるか信じないかはあなた次第の話

追跡アプリと生体チップの未来

『サピエンス全史』上・下(河出書房新社、2016)の著者で、
イスラエルの歴史学者 ユヴァル・ノア・ハラリ氏の記事を、
以前に紹介しましたが、
(『新型コロナ危機「非常事態が“日常”になったとき人類は何を失うのか」
─世界的歴史学者が予測』
本日誌 3月29日「カランダッシュがチャヤマクロビに変わった件」内)
なんと、この記事のリンク先(『クーリエ・ジャポン』2020/3/28 内)が
既に存在しないため(×△×)、
あらたに紹介します。(以下、Web河出 2020/04/07 所収 上述記事の別訳)

全文公開第二弾! ユヴァル・ノア・ハラリ氏(『サピエンス全史』ほか)が予見する「新型コロナウイルス後の世界」とは? FINANCIAL TIMES紙記事、全文翻訳を公開。

ハラリ氏は、今後の社会では、皮膚の下の情報で個人を監視する
バイオメトリクス監視技術 の発展を予想し、危惧していました。

既に、感染症対策として感染者の追跡アプリは、イスラエル、中国、韓国、
英国の一部などで用いられています。
現在はスマートフォン対応のアプリですが、
ですが・・・
SF好きなら、簡単に発想はスライドしますよね、
そう、生体チップです。

テスラとスペースXのCEO イーロン・マスク氏は、
脳に関連する病気治療のために、
脳内に埋め込むチップの開発を始めているそうです(『Business Insider』
Nov. 18, 2019)。
(『イーロン・マスク、脳に埋め込むAIチップが自閉症や統合失調症の”治療”に役立つと主張』)
手の甲などに埋め込む小型のチップは、小さな弾丸型や薄いフィルター型など、
既にクレジットカードと連動するものが、試験的に用いられているという話も
聞きましたが、
交通系クレジットカードが、スマートフォンで使用できる「今」をみれば、
感染症追跡アプリの「先」と結びつくのは、時間の問題のような気がします。

薄い膜のような、小さな生体チップを体内に、
簡単に埋め込む(貼り付ける?)だけで
クレジットカード、交通系パス、生体認証、万歩計、生体機能調査・・・
ができるようになるわけです。

わけですが、
同時に、生体機能「調整」もできるようになり、
それはビッグデータとして、巨大な「雲」の中に
集積されていくことになります。

火星にデータセンター

人類の火星移住計画は、私の子供の頃から唱え続けられてきたし、
萩尾望都の名作『スター・レッド』(小学館文庫、1995)も愛読した者としては、
人類がまだ火星に住んでいないのが、不思議なくらいですが(!)
このところ、地球の流れで「意識や情報をデータ化」してしまおう、
という方向に少しずつシフトしようとしているのかな、という印象を持っています。

そんな時、同時に出てくるのが、
「肉体にこだわるな」
というキーターム。

SF好きなら、
事故で脳だけになった少女が宇宙船と合体して、宇宙を旅する話などもあり
(アン・マキャフリィ著 『歌う船』 酒匂真理子訳、創元推理文庫、1984)、
チップに生体情報や取得情報を集積した「存在」が、
宇宙船に埋め込まれて宇宙を旅しても、普通に受け入れられるかもしれません。

最近、巨大企業が、様々な場所で次々とデータセンターを建設していて、
そのこと自体、現在の流通状況を考えれば何も不思議ではないのですが、
SF的に、生体チップの話と連動させて考えれば、
人類のコロニーを火星に作ることは、かなり難しいけれど、
データセンターなら、まだ可能性があるかもしれない、という気がしています。

そもそも「雲」と呼ばれる、もわもわした印象のものも、
実際は、物理的なデータセンターや、サーバーラックが収納されたコンテナ群です。
空間に情報を照射して記憶してもらうわけでは(今のところ・・・\^0^/)
ありません。

となると、SF的発想なら、
生体チップで取得した生体情報や後天的取得情報を、火星上に置いたコンテナ群の
「雲」と繋いでしまう、ことが考えられるわけです。
もっと突き詰めれば、
個人を特定するまとまった「情報群」こそが、
「人」と呼ばれるかもしれない、という…。
その時、物理的身体はあってもなくても構わない、ことになるかもしれません。

ここまできたら、『マトリックス』3部作(キアヌ・リーブス主演)ですよね。
(『マトリックス・リローテッド』の紹介を貼っておきます。)
…今だから言いますが、私は自分の宇宙冒険活劇SFで
『マトリックス』と同様の発想をしていて、
ある出版社に送ったところ、編集者から「どこかで見た世界」と言われ、
そんな馬鹿な!・・・と驚いて探し、初めて映画の『マトリックス』(第1部)
を知ったような次第でした。
ネブカドネザルとシオン(『マトリックス』ではザイオン)まで一緒だったから、
ちょっとゾッとしました・・・。
(当時、ユダヤ教に興味を持っていたので)

余談ですが、こういう話は私にはよくあって、
自分に浮かび上がったことは、他の誰かにも浮かんでいるかもしれず、
ただ、それを世に出せるかどうかは、
運や資金や技術や仲間や・・・その他もろもろの「縁」と「時機」に
依るのだろう、とそう思っています。
少なくとも、「発想」に関しては、「知恵の泉」のようなものがあって、
誰にでも平等に湧き上がっているけれども、
汲み取るかどうかはあなた次第、なのかな、と。
(勿論、現代を生きる者に「著作権」は必要です。)

ともかく、『マトリックス』はとても暗示的で、
ヴァーチャルな世界で人は暮らせるし、その際の肉体は、
あってないようなもの・・・かもしれない、と。

それは、『アバター』(ジェームズ・キャメロン監督、2009)も、
同じように指し示していました。
ちなみに、「アバター」は、サンスクリットのアヴァターラ(化身)由来の
言葉です。
人が「化身」によって、特定の世界をヴィヴィッドに生きる物語でした。

これらを思うと、人類はいつか、肉体ではなく、
「情報群」としての「存在」を選ぶ日がくるのかな、と
SF的に、発想してしまいます。
果たしてそれを、本当に「人」「人類」と読んでいいのかどうかは、
その人の宗教観や倫理観、思想信条によるでしょう。
しかも、本当に「人」が完全に「情報」に還元されうるかどうかも
私には疑問なのですが。

長くなりましたので、一旦、区切ります。
この話、続きます。

(感謝! 272447によるPixabayからの画像